ごあいさつ
私は2003年に神戸大学を卒業後、看護師として急性期病院、介護老人保健施設で2012年まで勤務しました。その後、大阪大学大学院に進学し疫学を学びながら2016年まで特別養護老人ホーム(従来型?ユニット型)、ショートステイ、認知症グループホーム、訪問看護ステーションで臨床に携わりました。2016年から神戸大学にて助教?講師として研究と教育に従事し、2024年8月に本学博士後期課程 看護臨床データサイエンス領域の新設に伴い着任しました。
これまで私は高齢者を中心に心身の健康を支えるエビデンスの創出を目指してきました。地域在住高齢者を対象とした健康長寿研究では、高齢期高血圧と認知機能の関連を横断的?縦断的に検証し、70歳では血圧管理が認知機能低下予防に重要であり、80歳では栄養状態や外出頻度が認知機能維持に寄与することを明らかにしました。また、在宅の介護保険サービス利用者と家族介護者を対象とした研究では、当時新しいICT機器であったウェアラブルデバイスを用いて、睡眠と心のありようとの因果関係や睡眠が家庭血圧に及ぼす影響をミクロ縦断研究デザインで明らかにしました。さらに現在は、高齢者施設入所者を対象に、ICTを用いた研究や、注目を集めるAIによる電子カルテデータ分析を進めています。
これらの経験を基盤に、私は高齢期に限らず生涯発達のすべての段階を対象とした研究に取り組んでいます。本学では、生涯発達看護実践科学部門の各領域と連携し、データサイエンスを駆使して看護実践を支える新たな知見を発信していきたいと考えています。このような研究に興味のある方はぜひ研究室を訪ねて来て下さい。よろしくお願いいたします。
2025年10月15日
中国体彩票app官方下载 特任教授 龍野洋慶
研究室紹介
日本の看護の現場には膨大なデータが日々蓄積されています。本研究室はこれらのデータを活用し、統計解析やAIなどのデータサイエンスを駆使して、看護ケアの質改善や臨床判断支援に資する新たな知見の創出を目指します。
主な研究テーマ
- 臨床看護データを用いた看護実践の可視化と評価
- 自然言語処理による看護記録の分析
- 臨床現場で活用可能なデータサイエンス技術の開発
- 看護実践におけるAI活用の倫理的?社会的課題の検討
- ウェアラブルデバイスなどのICTを活用した生活リズムの実態調査と健康課題との関連
これまでの研究テーマ
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機械学習による高齢者施設の科学的介護情報システムの活用とWell-being規定因子の解明(2024年~進行中)
大規模言語モデル(LLM)や機械学習で高齢者施設の電子カルテデータを解析し、入所者の生活の質や幸福感に関連する因子を検証しています(Ryuno H et al. BMJ Open 2025)。分担研究者の兵庫県立大学大学院情報科学研究科の竹村匡正教授はじめ研究室の皆さんと共同で研究を進めています。
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ウェアラブルデバイスを用いた高齢者施設入所者の身体活動量の実態調査および栄養状態との縦断的関連の検討(2023年~進行中)
身体活動量と睡眠の実態調査や栄養状態との関連を追跡調査し、介入の方向性を検討しています。大阪大学大学院医学系研究科の神出 計教授はじめ研究室ゆかりの研究者の皆さんと共同で研究を進めています。
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COVID-19流行下で高齢者施設入所者と家族をつなぐICTの活用と効果検証(2021~2023年)
コロナ禍でのオンライン面会が入所者と家族双方の安心感や満足度に寄与することを混合研究法(線形混合モデルによる量的研究の結果を質的研究で深化する説明的順次デザイン)で示しました(Ryuno H et al. Geriatr Nurs 2025)。
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在宅における介護保険サービス利用者と家族介護者の健康要因に関する国際比較研究(2018~2020年)
日本(神戸大学グライナー智恵子教授主宰、三重大学、京都文教大学、上智大学)と台湾(Taipei Medical University)、インドネシア(Universitas Indonesia)、タイ王国(Chiang Mai University, Kasetsart University)の家族介護者の健康課題を比較し、文化的背景による違いを明らかにしました(Ryuno H, Greiner C et al. Psychogeriatrics 2024)。
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在宅における家族介護者の介護負担感の要因に関する縦断的研究(2016~2017年)
ウェアラブルデバイスや家庭血圧計を用いて、家族介護者の睡眠とこころのありようとの関連(前日の睡眠時間の短縮が翌日の介護負担感やネガティブ感情に影響)、睡眠と起床時血圧の関連(前日の睡眠時間の短縮が翌日の起床時収縮期血圧の上昇に影響)をミクロ縦断研究デザインにより報告しました(Ryuno H et al. J Geriatr Psychiatry Neurol 2021; Ryuno H et al. Psychogeriatrics 2020)。
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地域在住高齢者を対象とした健康長寿研究:SONIC研究(2013~2017年)
大阪大学医学部?人間科学部?歯学部、東京都健康長寿医療センター研究所、慶応義塾大学百寿総合研究センターの共同研究に参画し、高齢期における高血圧と認知機能との横断的?縦断的関連などを報告しました(大学院在籍時。Ryuno H et al. Hypertens Res 2017※高血圧管理?治療ガイドライン2025引用文献; Ryuno H et al. Hypertens Res 2016など)。
詳しくは 健康長寿研究会ホームページ をご覧ください。


ゼミ生の受け入れについて
博士前期?後期課程では、医療?保健分野の専門職がデータサイエンスの視点を身につけ、臨床に根ざした研究を遂行できるよう支援します。本研究室は高齢期を中心としつつも、生涯発達のあらゆる段階を対象とした研究を受け入れています。また、本学の生涯発達看護実践科学部門に所属する各研究室と連携し、循環器疾患や糖尿病看護、周手術期看護、周産期看護など多様なテーマの研究に対して解析支援などを行っています。統計解析やAIを活用して科学的エビデンスを発信することを重視し、ともに研究を進め、看護実践を切り拓いていきましょう。
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