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病理学講座疾患制御病理学部門 教授
小笠原 一誠
10
SH I GA I DA I NEWS v o l . 2 3
免疫
戦略的イノベーション
創出推進プログラムに採択
戦略的イノベーション創出
推進
プログ
ラム
と
は、 大学と企業の連携を通して大学
等の研究成果の実用化を促進し、 イノベー
ションの創出を目指すもので、
「
革新的医
療を実現するためのバイオ機能材料の創
製
」を研究開発テーマに、 平成
24年度は
44
件の応募の中から、 私たちが取り組んでい
る 「悪性腫瘍の縮小ができる癌治療用カラ
ムの開発」 を含む8件が採択されました。
がん細胞は免疫を抑制するTGF
‐
β
(トランスフォーミング増殖因子
‐
β) を分
泌して、 Treg (制御性T細胞) を誘導す
ることで、 NK細胞やキラー細胞ががん細
胞を攻撃するのを妨げるほか、 免疫を抑制
することにより抗がん剤による治療の効
果も低下させると考えられます。
健康な人の血液中にも存在するTGF
‐
βは、 免疫作用を調整 重要な物質です
が、 がんの進行に伴って異常に増え、 がん
細胞の増殖を助けると考えられています。
私たちの研究は、 血液透析のような方法
でTGF
‐
βなどの免疫抑制物質を吸着し
て取り除き、 再び体内に戻す体外循環カラ
ムで、 免疫抑制の状態を改善してがんを治
療するというものです。
この研究のキーパーソンは、 東レ株式会
社で長年、 高分子化学 研究に取り組んで
こられた寺本和雄特任講師です。 同社を退
職後、
当
研究室でこのカラムを実用化する
ため、 現在は担がんラットを使って、 最も
効率よく免疫抑制物質を除去する吸着材
の特定を進めています。
当初はTGF
‐
βをターゲットにしてこ
JST (独立行政法人科学
(Sーイノベ) 」 に、 小笠原一
る 「LAP陽性制御性T細胞およ
-
βに対する選択除去材の創製およ
新的治療法への応用」 が採択されまし
24年度から平成
31年度まで、 8年度にわた
り研究開発を行う予定です。
病理学講座疾患制御
教授
小
お
が
さ
わ
ら
笠原
一
か ず ま さ
誠
ラットを使って免疫抑制物質を除去する吸着材を特定する実験が進められている。