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SH I GA I DA I NEWS v o l . 1 9
解剖学講座生体機能形態学部門 
教授 宇田川 潤 
胎生相関に
解剖学講座生体機能形態学部門
教授
宇田川
本学の解剖学講座には、 生体機能形態
門 (旧解剖学第二講座) の2部門がありま
平成
23年6月に生体機能形態学部門の教授に就任され
メインテーマである 「発生」 や今後の展望につい
常のある細胞ができてしまいま
にして、 病気の素因が形成さ
列の違いによらず
を生み出すしくみ
て、
くヒ
者を中心に据えた
究室を目指して
の骨格などの比率
私たちが三重比と
的に評価し
析する研究 でいろ霊長
重児が増えています。 これは、 一時
なっていた妊娠合併症を防ぐ
娠中の厳格な体重増加制限
傾向、 あるいは多胎妊娠
の強い痩せ願望から
制限も原因の一
ため日本では、 はないか
胞やグリア細胞の元となる神経幹細
胞やグリア前駆細胞が維持されるこ
とがわかりました。 すなわち、 ホルモ
ンやサイトカインを含む内分泌環境
の変化は、 胎生期に組織が作られて
いく過程でさまざまな影響を与えている
と考えられます。
欧米では1980年頃から、 胎児?新
生児?乳幼児の栄養環境が成人期の生活
習慣病の発症リスクに影響するという、
D OH a D
D e v e l o pme n t a l O r i g i n s o f
Hea l th and Di sease
:ドーハッド) と呼
ばれる考え方が広まってきました。 胎生
期に栄養が十分でないと、 生後に低栄養
状態に耐えられるように体が適応し、 出
産後に栄養を過剰に与えることによっ
て、 肥満や生活習慣病のリスクが増加す
るという考え方です。
わが国では、 平均出生体重が戦後の食
生活改善に伴って1980年頃までは上
昇していましたが、 以後は次第に低下し、
胎生期の環境と生活習慣病の
相関に着目したDOHaD研究
発生生物学は、 1個の受精卵から複雑な
成体ができるまでの個体発生のメカニズム
を解明する研究分野です。 精子と卵子がつ
くられる段階から、 受精を経て胎児から成
人に成長するまでを主に対象としています
が、 再生、 もっと広義には老化も発生学の1
分野として捉えることができます。
前任地の島根大学では、 胎生期 (胎児) の
脳の発生を中心に研究を行ってきました。
その一つとして、 脳視床下部に働いて食欲
を抑制し、 代謝 高める働き するレプチ
ンというホルモンが、 食欲とは無縁の
期にも、 脳や中枢神経の発生に関与してい
ることを明らかにしてきました。
レプチン欠損マウスは、 通常のマウスと
比較すると脳の発生がよくありませんが、
レプチンを投与すると脳を構成する神経細
出生時体重 2,500g 未満の出生割合の推移
近年、出生数は横ばい?減少となっているが、
低出生体重児の割合が増加している。
2,500,000
2,000,000
1,500,000
1,000,000
500,000
S35 S40 S50 S55 S60
H2 H7 H12 H17 H19
0.0%
2.0%
4.0%
6.0%
8.0%
10.0%
12.0%
厚生労働省「人口動態統計」
0
2500g 未満の出生割合
出生数
1,606041
1,934,239
1,901440
1,576,889
総数
平成 19 年
出生数 1,089,818 人
2,500g未満割合 9.6%
2,500g未満
1,431,577
1,221,585
1,187,064 1,190,547
1,062,530 1,089,818
7.1%
5.7%
5.1% 5.2% 5.5%
6.3%
7.5%
8.6
9.5% 9.6%
昭和 50 年
出生数 1,901,440 人
2,500g未満割合 5.1%