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SH I GA I DA I NEWS v o l . 2 1
免疫難病の治療への可能性を開く
免疫細胞の「動き」を標的とした免疫制御法の開発を目指して
の中に入 ローリングを
いう分子で、 活
トが働き、 インテグ
潜り込みが起こるとい
こっています。
血管内皮側にはP
‐
セレクチンとE
‐
セレ
クチンという分子があり、 接着分
ず相手方 (リガンド) がいます。 こ
研究で、 その相手方であるPSGL
‐
1とC
D
43という分子を同定しました。 PSGL
‐
1を欠損したマウスは炎症初期には血管内
でローリングが起こりません。
PSGL
‐
1はリンパ球がいろいろな組
織に入っていく時にも必要で、 特に皮膚に
感作リンパ球が浸潤していく時に必要で
す。 皮膚 リンパ球が浸潤するのは アト
ピー性皮膚炎などの炎症性の皮膚疾患に多
くみられ、 PSGL
‐
1とCD
43を欠損する
感作リンパ球は皮膚に浸潤することができ
ず炎症を引き起こしません。
一方、 感作されていないナイーブT細胞
は、 PSGL
‐
1とCD
43がない状態では
逆に接着や増
殖が亢進しま
す。 ナイーブ
な状態と抗原
刺激を受けて
感作された状
態では、 分子
が逆の作用を
持つことがわ
かりました。
ナイーブ細胞
では接着や増
殖を抑制 旦感作される
ていくところを
今研究しようとして
えるスイッチのメカニ
ということで、 特にタンパ
酵素に着目して、 機構、 分子
明に取り組んでいます。
生体内での免疫細胞の動きを解明するこ
免疫応答異常の制御に繋げる
リンパ球は組織から血管に戻る場合、 い
きなり血管に戻らずリンパ管に入るのです
が、 この移出を抑えて循環を断ち切ること
が、 免疫応答を制御するプロセスとして大
事なところであると考えています。
ERMタンパク質は細胞膜の直下にあっ
て、 細胞膜 細胞骨格を繋いでいる分子で
すが、 このERMタンパク質が移出にかか
わっていることを最近見いだしました。 E
RMタンパク質 一つであるモエシンを欠
損するマウスは、 リンパ球がリンパ組織か
ら出る移出が阻害されます。 現在、 リンパ球
がどのようにしてリンパ組織から全身循環
に戻るのかというメカニズムの解析に取り
組んでいるところです。
リンパ球を含む免疫細胞の移動に関して
は未だにわからない とがたくさんありま
す。 例えば組織の中でどのように動くか、 い
くつかのケモカインに出会った時 、 どのシ
グナルに従うかをどのように決め のか、 留
まったり離れたりするタイミングをどのよ
うに決めているか、 ケモカインを輸送したり
提示したりするものは何かなど、 わからない
ことを少 います。
免疫細胞は動く
特殊な細胞なので、
いてどのように止まっ
るか、 そのメカニズムを明
ターゲットにすることで、 自
どの免疫難病の治療につなげるこ
して研究を進めています。
医学教育の土台となる生物学の理解と
自覚的学習姿勢の育成のために
生物学の講義では、 1年生に生命とは
何か、 生物としてのヒトとは何かを探求
して、 生物の多様性と共通性を理解して
もらえるようにしています。 特に重点を
置いているのは、 生物には階層があると
いうことで、 細胞が集まって組織になり、
組織が集まって器官に、 器官が集まって
生体になり、 さらに群集、 生態系、 生物
圏を構成するという階層を理解しても
らい、 細胞内の一分子の挙動から 物圏
レベルの現象まで、 環境問題も含めて考
えなが 、 生物学を学んでもらいたいと
思っています。
生物学は基礎医学を理解する土台とな
るものですので、 1年 の間にきちんと学
んで生物学の知識を習得してもらい、 専門
教育へとスムーズな導入ができるように
したいと思っています。 また、 医学の進歩
や医療を取り巻く環境の変化にも柔軟に
対応できる力を付け もらえるように、 講
義や実習を通して、 自覚的学習姿勢の育成
を促したいと考えています。