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SH I GA I DA I NEWS v o l . 1 9
標準治療の提供で幅広くアレルギー性皮膚疾患に対応
として認定
22年度か
ら保険医療と
悪性黒色腫は皮膚
に転移する可能性が
際にリンパ節郭清を行っ
手術による侵襲や術後の合
くないことから、 リンパ節転移
るために、 手術の前、 あるいは手
病巣に色素や放射性同位元素を注入し
が最初に入るセンチネルリンパ節を詳し
査して、 転移が見つかった場合にのみリンパ
節郭清を行うようになりました。 県内で悪性
黒色腫のセンチネルリンパ節生検を先進医療
として行っていたのは当科だけです。 微小な
転移を見つける医療技術が先進医療から保険
医療に移った事は、 日本の医療水準が一歩進
んだことを意味します。
次のステップとして、 私たちは、 がんに関し
ては 「隆起性皮膚線維肉腫の遺伝子診断」 で
先進医療を行っています。 これはがん 診断
に遺伝子工学の手法を取り入れたものです。
隆起性皮膚線維肉腫は、 皮膚の線維芽細胞が
悪性化 (がん化) したものですが、 見ただけで
は悪性か良 かが区別しにくいため、 確定診
断が困難な場合、 この肉腫からRNA (リボ核
酸) を採取して、 融合タンパクを作るRNAが
あるかどうかを調べる遺伝子検査を行いま
す。 正常細胞では、 コラーゲンの遺伝子とPD
GF (血小板由来増殖因子) の遺伝子は、 独立
して存在していますが、 この 「がん」
(肉腫と言
います) では、 2つの遺伝子がお互いに融合し
て、 遺伝子融合を起こしています。
遺伝子融合を証明する事が、 この病気の診
断では早道で、 正確な診断へとつながります。
また、 現在、 ケラチン病の先進医療を行うた
めの準備を進めて 。 ケラチン病は皮膚
のケラチン する疾患で、
塩基配列を調べて
定診断を行います。
を取り入れた診断法です
今後、 このような遺伝子診
されますが、 当科では教授を含
が臨床遺伝専門医の資格を取得し
紅皮症で当科を受診された患者さん 皮膚
病変から、 これまでに報告のない新しい抗酸
菌が発見されました。
複数箇所の組織から分離したもので、 当初
M. simiae
(マイコバクテリウム?シミエ) で
はないかと考えましたが、 国立感染症研究所
に詳細な遺伝子解析を依頼した結果、 未だ報
告のない新しい抗酸菌であることが判明しま
した。 
発見者には菌の命名権が与えられること
から、
「マイコバクテリウム?シガエンス:
Mycobacterium Shigaense
」 と名付けました。
ヒトの感染の原因となる菌が発見されること
はたいへんめずらしいことです。 最終的な詰
めの実験は国立予防研究所 らびにイタリア
の共同研究者にお願いを ましたが、 その前
のステップ、 すなわち、 この菌がこれまで知ら
れている非結核性抗酸菌症であるところまで
突き止めたのは、 滋賀医大検査部の資格を持
つ方々 (臨床検査技師と言う資格です) の能力
がいかに高いかを示す良い例ではないかと皮
膚科では考えております。
例えば、 ア ンケアの指導
定、 症状に合わせ
とかゆみのコントロ
によって適切に組み合わ
とされており、 具体的には
免疫抑制剤プロトピック軟膏を
ている場所や病気の強さ 応じて
ほか、 かゆみを抑える抗ヒスタミン剤
レルギー剤を用いることもありますし、
を阻止するための治療も行います。
疾患によっては、 標準治療を提供するため
に高い技術力が必要になることがあります。
特に、 自己免疫性水疱症やSLEに対して、 通
常のガイドラインが推奨する全ての標準治療
の行える施設は限られています。 例えば、 自己
免疫性水疱症の標準治療は、 ステロイド全身
投与を第一選択とし、 免疫抑制薬を用いるこ
ともあります。 難治性の場合は血漿交換療法
や大量γグロブリン療法を行っています。
アレルギーを起こす物質を特定して、 それ
を避けることは非常に大切な考え方です。
型のアレルギーの代表である接触皮膚炎で
は特にそうです。 革の手袋をすると手がかゆ
くなる方がありますが、 革をなめすため 使
う金属にかぶれている事が多いです。 金属の
貼付試験を行いますと陽性にでます。 このよ
うな時は、 かぶれを起こすものを含む衣類な
どを遠ざける事が最も大切な生活指導にな
ります。
先進医療のお話し
ーより精度の高い遺伝子診断への取り組みー
当科では 「悪性黒色腫におけるセンチネル
リンパ節の同定及び転移の検索」 が先進医療
新種の抗酸菌 「シガエンス」 を発見
ーモモから生まれた桃太郎、
滋賀で見つけたシガエンスー
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